日本に生息するツキノワグマとヒグマでは、身体の規模だけでなく、人間を襲う動機と攻撃パターンに根本的な違いがあります。生還を果たすためには、両者の習性の違いを理解しておくことが欠かせません。
本州や四国に生息するツキノワグマ(成獣の体重:約60〜120kg)の襲撃は、その大半が「不意の遭遇によるパニック・防衛行動」です。見通しの悪い茂みやカーブで人間と鉢合わせた際、恐怖心から先制攻撃を仕掛け、爪で顔面や頭部をひっかいて相手を行動不能にした後、一目散に逃走する傾向があります。
対して、北海道に生息するヒグマ(成獣の体重:約150〜400kg超)の襲撃は、防衛行動に加えて「捕食・獲物の奪還・明確な敵対排除」の動機が加わります。大正時代に起きた日本史上最悪の獣害事件「三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)」が示す通り、ヒグマは一度人間を獲物や餌の奪還者と見なすと、執拗に追跡し、家屋を破壊してでも襲いかかる強い執着性を示します。
近年では、市街地に出没するいわゆる「アーバン・ベア」において、人間への警戒心を失った個体が増加しており、ツキノワグマであっても威嚇にとどまらない執拗な攻撃を見せるケースが報告されています。