知恩寺のすぐ西側に広がるのは、自由の学風を誇る京都大学の吉田キャンパスだ。大学が生み出す独特の学問的空気は、街全体のカルチャーにも濃密に反映されている。今出川通沿いには年季の入った古書店が軒を連ね、哲学書から前衛芸術の図録、色褪せた文芸誌までが山積みにされている。背表紙を眺めながら歩くだけで、まるで知の迷宮に迷い込んだような錯覚に陥る。
歩き疲れたら、昭和初期創業の老舗喫茶店「進々堂 京大前店」の重厚な扉を開けたい。人間国宝である黒田辰秋が手がけた長机とベンチが並ぶ空間で、かつて学生や知識人たちが夜を徹して議論を交わした。名物のパンと熱い珈琲を味わいながら読書に没頭する時間は、学生街・百万遍ならではの贅沢な過ごし方だ。