一方、この開発計画に対して待ったをかけたのが日本建築学会だ。学会側は、ビルの独特なキャンティレバー構造や手仕事によるモザイク壁画が「戦後モダニズム建築の金字塔」であると主張。建物全体の完全保存、あるいは部材の恒久的な現地保存を求める要望書を行政に提出した。
これに対し、莫大な開発費を投じる不動産業界側からは反発の声が上がる。都心の超一等地に耐震性能を満たさない老朽建築を維持し続けるリスクは、安全面・経済面双方から許容できないという主張だ。経済合理性と文化財保護――両者の激しい対立は、現在の東京が直面する再開発のジレンマを鮮明に浮き彫りにしている。