これほど鮮明なDNA、血液型、靴痕、目撃証言がありながら、なぜ事件は迷宮入り寸前となってしまったのか。捜査関係者や犯罪ジャーナリストの分析によると、そこにはいくつかの決定的な要因が存在します。
第1に、被害者の周辺人間関係と犯人像の不一致です。昼下がりに自宅玄関から侵入された形跡がないことから、顔見知りの犯行が強く疑われ、警察は被害者の交友関係、親族、学生時代の知人、近隣住民など膨大な対象者のDNA照合を行いました。しかし、該当する人物は一人も見つかりませんでした。
第2に、犯人が前科・前歴を持たない初犯の一般人であった可能性です。警察が保有する犯罪者データベースに犯人のDNAが登録されていなかったため、照合による割り出しができませんでした。
第3に、突発的な動機による犯行、あるいは一方的な逆恨み・人違いの可能性です。被害者自身に恨まれる覚えが全くなく、犯人が一方的な思い込みやストーカー的執着を持っていた場合、従来の「被害者の人間関係を洗う」捜査手法では線上に浮かび上がりにくいという死角がありました。