なぜトヨタは40系において、ここまで極端な棲み分けを敢行したのでしょうか。そこには、2026年5月に実施された国内全店舗全車種併売化に伴う「ヴェルファイア存亡の危機」と、開発現場での劇的な方針転換がありました。
30系後期モデルにおいて、アルファードが押し出し感の強い巨大グリルで圧倒的な支持を集めた一方、ヴェルファイアの販売台数はアルファードの10分の1前後にまで激減。「次期型でヴェルファイアは消滅し、アルファードへ一本化される」という観測が業界内外で既定路線と見なされていました。
この流れを覆したのが、当時の豊田章男社長(現会長)をはじめとする首脳陣の鶴の一声でした。「ヴェルファイアの持つ熱狂的なファン層を失ってはならない」「残すのであれば、単なるデザイン違いではなく、乗れば明確に違いが分かる別個のクルマに仕立て直せ」という至上命題が開発チームに下されたのです。これが後に業界を沸かせたヴェルファイア復活のニュースの舞台裏です。
開発主査が公式インタビュー等で明かした通り、アルファードは「堂々とした風格と快適性を極めた高級サルーン(ショーファーカー需要も包括)」、ヴェルファイアは「走りの質感を研ぎ澄ませたアグレッシブなドライバーズカー」という明確な役割分担が与えられました。かつてカローラとスプリンター、マークIIとチェイサーが演じたような、走りのテイストによる差別化が現代の最高峰ミニバンで再定義されたと言えます。