作中で世間を震撼させる連続殺人犯「バッファロー・ビル」の本名は、ジェーム・ガム(Jame Gumb)です。出生証明書を作成した役所のタイプミスにより、「James」ではなく「Jame」と登録されたこの本名は、彼が社会において最初から不条理に歪められた存在であったことを象徴しています。
捜査当局が彼に名付けた「バッファロー・ビル」という禍々しいコードネームは、かつてアメリカ西部開拓時代にバイソン(バッファロー)を大量に狩り、皮を剥いだとされる実在の興行師ウィリアム・フレデリック・コーディの愛称に由来します。FBIの捜査官が現場の遺体を見て放った「このホシは、バッファロー・ビルのように獲物の皮を剥ぎ取るのが好きな変態だ」というブラックジョーク混じりの発言がマスコミにリークされ、全米を震え上がらせる通称として定着しました。
ガムの表の顔は、古びた洋館に引きこもりながら洋服の仕立てや裁縫をこなす孤独な仕立て屋でした。物静かで社会の片隅に隠れるように暮らす彼が、夜な夜な巨大な地下室で進行させていたのは、常人の想像を絶する「狂気のプロジェクト」だったのです。