青山が抱えていた葛藤と恐怖は、初期から物語の随所にサインとして配置されていました。なかでもファンの間で長年議論を呼んだのが、林間合宿後の寮生活において、緑谷出久のベランダの外にチーズで残された「ぼくは知ってるよ(イル・フォ・ス・メフィエ・デ・ロー・キ・ドール=静かな水に油断するな)」という奇妙なメッセージです。
当時、読者の間では「青山が緑谷のワン・フォー・オール(OFA)の秘密に勘づいたギャグシーン」と受け止められる向きもありました。しかし真相が判明した今振り返ると、その文脈は完全に反転します。同じく「生まれつき無個性であり、後天的に個性を得た」という共通点を持つ緑谷に対し、青山はシンパシーを感じると同時に、自らが犯している大罪の重さに耐えかねて無意識のSOSを発信していたのです。
また、ネビルレーザーを撃つと激しい腹痛に襲われる体質も、単なる身体的ギャグ描写ではありませんでした。本来の肉体に備わっていない「他者から移植された個性」であるがゆえに身体と個性が適合しておらず、専用のサポートベルトがなければレーザーが漏れ出てしまうという、彼の悲しいルーツを雄弁に物語る伏線でした。