経済統計の数字と、一般市民が肌で感じる「豊かさの実感」の間には無視できない乖離があります。日本と韓国の物価比較を現場目線で掘り下げると、東京とソウルの生活コストの様相は一変します。
実際にソウル市内のIT企業に勤務する30代の日本人駐在員は、現地の物価事情について次のように証言します。
「給与明細の額面だけを見れば、ソウルの大手企業は日本の同世代より遥かに高い水準をもらっています。しかし、市内のカフェでアメリカーノを頼めば6,000ウォン(約660円)、ランチに普通のチゲ定食を食べても1万3,000〜1万5,000ウォン(約1,400〜1,650円)があっという間に消える。リンゴ1個が500円近くすることも珍しくありません。ソウル中心部のチョンセ(保証金制度)や家賃相場の暴騰もあり、手元に残る可処分所得の感覚は東京で暮らしていた頃よりも明らかに窮屈です」
一方、日本へ観光や就労で訪れる韓国人層のSNS投稿や現地取材では、全く逆の驚きが語られています。「東京の牛丼チェーンやファミレス、スーパーの食料品価格は信じられないほど安くて品質が高い」「1,000円札1枚でまともな温かい食事が食べられる日本は天国だ」という声が日常的に溢れているのです。
名目賃金の上昇率において韓国が日本をリードしてきたのは紛れもない事実ですが、食費や住居費などの基礎的生活必需品のインフレがそれを上回る勢いで進行しています。その結果、多くの一般生活者にとって「数字の上では豊かになったはずなのに生活が苦しい」という実感が色濃く残るパラドックスが生じています。