なぜ岡山ではこれほどまでにドライバーの運転行動が荒れてしまうのか。その背景には、運転者の気質だけでなく、岡山特有の極めて過酷な道路環境と交通工学的な構造問題が存在します。
第一の要因は、全国的に有名な「柵のない用水路」の多さです。農業王国である岡山平野には、縦横無尽に農業用水路が張り巡らされています。道幅が狭く、路肩のすぐ脇が深さ1メートル以上の水路であるにもかかわらずガードレールが設置されていない道路が至る所に存在します。脱輪や転落の恐怖が常にあるため、ドライバーの意識は「自車の車幅維持」に過度に奪われ、周囲の車両や歩行者への合図確認というマルチタスクがおろそかになりやすい環境下にあるのです。
第二の要因は、大動脈である国道2号線バイパスの慢性的な交通麻痺です。物流の要所である岡山バイパスは、1日の交通量が10万台を超える国内有数の過密区間です。インターチェンジの合流車線が極端に短い箇所が多く、速度を落とさずに本線のわずかな隙間へ滑り込まなければならないプレッシャーが日常化しています。これが結果として、「ウインカーを出す前に頭を突っ込む」というアグレッシブな合流スタイルを地元民に強いる土壌となりました。
平坦な地形ゆえに自転車や歩行者も多く、入り組んだ城下町の道路遺構が抜け道利用を促進していることも、接触事故や急な割り込みを多発させる構造的引き金となっています。