実在の人物を描く伝記映画は、時として劇的な誇張に陥りがちだ。しかし本作は、日台の近代史という重厚な背景を背負いながらも、徹底して「台所」というパーソナルな空間に視点を据え続けた点が高く評価されている。戦後のアジア情勢と個人の幸福がいかに交錯していたかを、食文化という誰もが共感できるレンズを通して描ききった。
台湾と日本の文化的架け橋となった顔家と一青家の物語は、多文化共生が叫ばれる現代において、より一層のリアリティと温かさを持って迫ってくる。国境を越えて人と人を結ぶものは、条約や経済ではなく、共に囲む食卓の温もりであるという事実を、かづ枝の生き様は教えてくれる。