精神科医・作家の春日武彦が迫る人間の異常心理と表現の本質とは何なのか。最新の臨床知見と研ぎ澄まされた批評眼が暴き出すのは、狂気と創作がコインの裏表のように分かちがたく結びついた、人間の根源的な業である。
表現行為とは、精神の均衡が崩れかけた者が世界の崩壊を食い止めるために差し出す、必死の防衛機制に他ならない。妄想や脅迫観念に苛まれる精神構造と、傑出した芸術家がカンバスや原稿用紙に異形のヴィジョンを定着させる衝動――両者を隔てる境界線は、驚くほど薄く脆い。異常心理を単なる逸脱として断じるのではなく、人間が生き延びるために紡ぎ出す「表現の極限形態」として捉え直すことで、私たちは創作という行為の持つ真に不穏で神聖な核心に触れることになる。