テレビ朝日とABEMAの共同制作によって2026年に世に放たれた『M 愛すべき人がいて』は、単なる伝記ドラマの枠組みを根底から破壊した作品だった。原作は小松成美による同名ノンフィクション小説。そこに鈴木おさむの過激な脚本が加わったことで、平成の歌姫誕生劇は極上のジェットコースター・エンターテインメントへと昇華した。
主役に抜擢されたのは、当時鮮烈なデビューを飾ったばかりの安斉かれんと、確固たる演技力でプロデューサー・マサ役を演じきった三浦翔平だ。虚構と現実が入り混じるスリリングな演出、眼帯姿の秘書など怪演が光る脇役陣の存在感は、深夜帯の放送でありながらTwitter(現X)のトレンド世界トップを幾度も奪取した。視聴者が目撃したのは、単なるサクセスストーリーではない。エイベックスという巨大音楽レーベルが産声を上げ、ひとりの少女を時代の象徴へと仕立て上げていく生々しい狂気そのものだった。