2019年の東京大学入学式において、名誉教授の上野千鶴子氏が行った祝辞は、日本社会全体に強い衝撃を与えた。「頑張っても報われない社会が待っている」「入試は公正に見えても構造的な不平等が存在する」という鋭い指摘は、大学関係者のみならず一般市民の間でも大きな議論を巻き起こした。あの鮮烈な発言から時が経ち、大学側は本格的な組織改革に乗り出している。
藤井輝夫総長のもとで策定された「UTokyo Compass」は、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を大学経営の最重要指針の一つに掲げた。教員や学生の多様性を確保することは、単に人権的な配慮にとどまらず、新しい学術的イノベーションを生み出すための不可欠なインフラであるという理念だ。学内でのジェンダーバランス改善に向けた意識啓発や、意思決定機関への女性登用など、キャンパス内の空気は確実に変わりつつある。