グレート・ムタの音楽的アイコンを確立させた人物こそ、数々のプロレス入場曲を手掛けた希代の作曲家・鈴木修氏です。橋本真也の「爆勝宣言」や武藤敬司の「HOLD OUT」など、プロレス史に残る名曲を世に送り出してきた鈴木氏ですが、ムタの楽曲制作においては全く異なるアプローチが採られました。
代表曲「MUTA」の制作当時、求められたのは「東洋の神秘」と「予測不能の狂気」の具現化でした。オリエンタルな音階を用いながらも、チープなアジアンテイストに落とさず、ヘビーなロックビートと融合させることで、国境を越えて通用するダークヒーローのアンセムを完成させたのです。
さらにその世界観を究極まで押し広げたのが「愚零徒武多 協奏曲」です。クラシックの協奏曲形式を取り入れ、パイプオルガンやストリングスを重層的に重ねた荘厳なイントロは、聴く者すべてに「これから異界の怪物が降臨する」という戦慄を与えました。単なるBGMではなく、会場の空気を一変させる舞台装置として計算し尽くされた音の構築こそが、今なおプロレス入場テーマ曲ランキングで上位に君臨し続ける理由です。