完結巻における最大の悲劇は、パルス国の未来を担うはずだった「パルス十六翼将」の壊滅劇です。物語序盤から無敵の強さを誇り、アルスラーンを支え続けた猛将ダリューンすら例外ではありませんでした。ダリューンは蛇王ザッハークとの死闘において凄絶な一騎打ちを繰り広げ、致命傷を負いながらも敵を足止めし、壮絶な戦死を遂げます。
そして主人公であるアルスラーン自身もまた、ザッハークを討ち滅ぼす代償として深手を負い、ダリューンの遺骸の傍らで若くして息を引き取るという痛烈な最後を迎えました。アルスラーンの死因は、魔王との直接対決による致命傷と極限状態での力尽きによるものです。少年の成長と即位を描き続けてきた大河小説の主人公が、治世をほとんど謳歌することなく散る結末は、ファンの胸に深い爪痕を残しました。
十六翼将の中で生存が確認されたのは、アルスラーンとダリューンの最期を看取り、彼らの軌跡を後世に伝える語り部となったエラムなど、ごくわずかな人物に限られます。ファランギースやギーヴ、キシュワード、クバードら歴戦の勇士たちが、まるで点呼を取るかのように短縮された描写の中で散っていった構成は、長年の愛読者にとって「あまりにも性急で救いがない」と受け止められました。