これほどの実績とドラマを持ちながら、福島弓子氏がメディアの単独インタビューに応じることは現在に至るまで皆無に等しい。かつて社会現象となったドキュメンタリー番組『情熱大陸』の密着取材や、近年の『DAZN』による独占コンテンツにおいても、カメラの中心は常にイチロー氏の思考と技術であり、妻の肉声が前面に出ることはなかった。
この徹底した沈黙こそが、彼女のプロフェッショナリズムである。自らが前に出ることでイチローというアイコンに余計な物語が付着することを嫌い、情報統制を徹底する。プライベートを完璧に防衛し、世間の好奇の目から夫婦の聖域を守り抜く姿勢は、かつてテレビカメラの前に立ち、メディアの消費構造を知り尽くした元アナウンサーだからこその防衛策と言える。