感謝の気持ちを素早く届ける行為そのものは、ビジネスにおいて極めて高く評価されます。それにもかかわらず、「取り急ぎお礼まで」というフレーズがマナー違反として厳しく指摘される背景には、日本語の構造と心理的ニュアンスに関わる決定的な2つの理由が存在します。
第1の理由は、文末の述語が省略された「投げやりな文構造」にあります。「〜まで」で文章を終える形は、本来「取り急ぎお礼までに(留めさせていただきます)」という言葉を途中で打ち切った省略表現です。敬語体系において、述語を省く行為は同僚や後輩など対等以下の間柄でのみ許されるフランクな扱いであり、敬意を払うべき相手に対して用いるのは礼を欠く行為とみなされます。
第2の理由は、「取り急ぎ」という言葉そのものが持つ語感です。「取り急ぎ」は「十分な準備や礼儀を尽くせていないが、ひとまず急いで」という意味を内包しています。受け手側からすれば「準備が雑なまま片付けられた」「とりあえずの作業として扱われた」と受け取られかねません。悪気はなくとも、言葉選び一つで相手を軽視しているかのような誤解を生む原因になります。