現場の道場やリングにおいて、「後の先」はどのような形で具現化されているのでしょうか。各競技の最高峰における実態を検証すると、共通する身体感覚と戦略が見えてきます。
剣道 後の先の代表格といえば、「返し技」や「すり上げ技」です。全日本剣道選手権などで幾多の名勝負を生み出してきた高段者たちの証言によると、達人の「後の先」は決して相手の竹刀を見てから反応しているわけではありません。範士八段の指導者が講習会で語った記録には、次のような肉声が残されています。
「相手が打ってくるのを待っていては絶対に間に合わない。こちらの構えや気迫で『ここを打つしかない』という隙をあえて相手に見せ、打たせておいて打つ。すなわち『懸待一致(けんたいいっち)』──攻める心と待つ心が一つになって初めて後の先が成立する」
また、合気道 後の先の実践においては、相手の攻撃エネルギーを一切遮断せず、円運動によって同調・吸収しながら技を完結させます。開祖・植芝盛平の口伝にも見られるように、相手が打ちかかってくる力をそのまま利用し、相手自身の重心バランスを崩させる技術体系は、「後の先」の極致と言えます。
総合格闘技(MMA)やボクシングにおけるカウンター使い(メイウェザーやイスラエル・アデサニヤなど)の戦いぶりを見ても、相手のパンチを誘い出し、相手の頭部が前方へ流れた瞬間に正確無比な一撃を叩き込む姿は、まさに現代格闘技に息づく「後の先」の体現です。