なぜそこまで徹底した食事制限を課す必要があったのか。その理由は、フィギュアスケートという競技の過酷な物理的特性にあります。
紀平選手の代名詞であるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)や4回転トウループは、滞空時間わずか0.5秒〜0.7秒の間に空中で体を極限まで細く絞り、猛烈なスピードで回転する必要があります。体重がわずか100グラム増減するだけで空中の回転軸がブレ、着氷時に膝や足首にかかる負担は何倍にも膨れ上がります。
シニアデビュー当時、紀平選手が計測していた体脂肪率は約6%前後。一般的な成人女性の標準体脂肪率が20〜28%程度であることを考えると、男子トップアスリートやプロボクサーに匹敵する驚異的な数値です。毎朝毎晩の体重測定はもちろん、水分量や塩分によるむくみまでミリ単位で計算し尽くされた日々を送っていました。