この楽曲を手がけたのは、新海作品の初期音響を支えた作曲家・天門氏だ。フルオーケストラを多用した重厚な映画音楽が増えるなか、この曲の構造は驚くほどシンプルに削ぎ落とされている。主律を奏でるピアノのひと音が落ち、その余韻が静けさのなかに溶けていく間(ま)――それこそが聴き手の胸をしめつける。
音符と音符のあいだに存在する「沈黙」が、視聴者それぞれの個人的な記憶や後悔、二度と戻らない時間を受け止める器となる。あらゆる情報が15秒単位で詰め込まれる2026年代半ばのコンテンツ消費への反動として、この引き算の美学が新鮮な衝撃をもって受け止められているのだ。