メガホンをとった藤井道人監督の鋭い視線は、本作でも遺憾なく発揮されている。地方都市の寂れた空気感、画面を叩く激しい雨、潜伏先の冷たいコンクリートの質感。緻密にプログラミングされた映像美が、鏑木の孤独をどこまでも残酷に浮き彫りにする。
単なるスリラーに終始せず、格差社会や冤罪の恐怖、SNS時代の無責任な正義感といった現代的なモチーフを自然な形で背景に織り込んだ手腕も見事だ。スクリーンに映し出される景色は、決して遠いフィクションではない。明日、私たちが直面するかもしれない現実の冷たさと暖かさを、藤井監督は卓越した色彩感覚とカット割りで表現しきってみせた。