足を踏み入れると、まず匂いが違う。湿度80%に保たれた熱帯雨林ゾーンでは、腐葉土と湿った樹皮の香りが立ち込め、頭上からは微かな霧が降り注ぐ。最新のアロマシステムと温湿度制御AIが、南米アマゾンの夜明けやアフリカのマダガスカル島の日没をリアルタイムで再現しているのだ。
「これまでのケージ展示とは次元が違います」と語るのは、館内の環境デザインを手掛けた生態系デザイナーの佐藤氏だ。単に生き物を閉じ込める箱ではなく、彼らが数百万年かけて適応してきた「小宇宙」そのものを建築として切り取った。来場者は暗闇の中で目を凝らし、葉の裏に潜むカメレオンの体色変化や、枯れ葉に擬態したマタマタの微かな動きを探し出す。探検家さながらの緊張感が、スマホ画面に慣れきった都市生活者の感覚を研ぎ澄ませていく。