事件の発端は、あまりにも唐突だった。小学校への襲撃予告、航空機爆破予告、コミックマーケットへの無差別テロ予告。次々とネット上に投稿される不穏なメッセージに対し、警視庁をはじめ神奈川県警察、大阪府警、三重県警は捜査を開始。すぐにIPアドレスの割り出しに成功し、端末を所有していた4人の人物を逮捕した。
しかし、それは恐るべき冤罪の連鎖だった。犯行に使用されたパソコンは、遠隔操作ウイルス(トロイの木馬「iesys.exe」)に感染していたのだ。持ち主の意思とは無関係に、裏口(バックドア)から不正操作されていたに過ぎない。
何より社会を戦慄させたのは、無実の被疑者たちが取調室で「自白」に追い込まれていたという事実だ。パソコンのログさえ詳細に解析せず、IPアドレスの一致だけを絶対視した警察組織。密室の取り調べによる自白強要の実態が白日の下に晒され、日本のサイバー捜査能力の稚拙さは国際的な失笑を買うことになった。