ネット上の映画レビューや考察スレッドでは、本作のプロットや登場人物の動機に関して、いくつかの事実誤認や誤解が散見されます。鑑賞者の間で議論が分かれがちな3つのポイントについて、事実関係を検証します。
誤解1:湯川学は真犯人を見逃して事件を隠蔽したのか?
一部のレビューでは「湯川が警察の捜査を妨害し、犯人を庇ったのではないか」という批判が見られます。しかしこれは明白な誤解です。湯川は成実や重治に対して自首を促し、重治は自らの意思で警察に出頭して逮捕されています。湯川が意図して伏せたのは「恭平が煙突を塞ぐ行為に関担していた事実」のみです。司法の場において小学生の恭平が共犯者として扱われることを防ぎ、子どもの精神的崩壊を避けるための人道的な配慮でした。
誤解2:成実は16年前の事件で法的に裁かれるのか?
事件当時、成実は中学生(刑事未成年または少年法の適用範囲)であり、かつ発生から16年が経過しています。映画公開当時の法制度においても、成実が直接罪に問われる可能性は極めて低く、重治が塚原を殺害した動機は「成実の法的処罰」を恐れたためというよりは、「殺人者としての過去が公になり、娘の築いてきた人生や名誉が完全に崩壊すること」を恐れた過剰な防衛本能によるものでした。
誤解3:なぜ足の不自由な重治が遺体を堤防まで運べたのか?
車椅子生活を送る重治が、大柄な元刑事の遺体を一人で海まで運ぶのは物理的に不可能ではないかという疑問も多く寄せられています。この点について原作および劇中では、重治が車椅子を巧みに操り、リヤカーや傾斜スロープを活用して夜間に運搬した手順が説明されています。湯川が実験現場の傾斜角やタイヤ痕の摩擦係数に着目したのも、重治の身体的制約と遺体遺棄の実現可能性を検証するためでした。