この現象の根底には、半世紀近く愛され続ける偉大なクリエイティビティが存在する。1986年に産声をあげた『ドラゴンクエストシリーズ』。ゲームデザイナーの堀井雄二氏が描いた「ドロドロとした粘液状の不定形生物」という初期ラフ画は、漫画家・鳥山明氏の類まれなるセンスによって、一滴の水滴のような、つぶらな瞳を持つ究極のシンプルデザインへと生まれ変わった。
株式会社スクウェア・エニックスが大切に育んできたこのアイコニックな造形は、敵でありながら誰もがひと目で抱きしめたくなる魔力を持つ。白目と黒目の絶妙な黄金比、キュッと上がった口角。無駄を極限まで削ぎ落としたデザインだからこそ、フライパンという制約の多い調理器具の上でも、誰もが「スライム」として成立させることができる。世代を超えた巨匠たちのデザイン哲学が、現代の家庭のキッチンで再び息を吹き返している。