本作の基本構造は、豪壮な邸宅の上階(Upstairs)に暮らすグランサム伯爵クローリー家と、地階(Downstairs)で屋敷を支える使用人たちの対比にあります。当時の英国貴族社会における「限嗣相続制(げんしそうぞくせい=爵位と一体となった領地・財産は男系男子のみが継承する規定)」が、物語のすべての起点となっています。
伯爵夫妻にはメアリー、イーディス、シビルの3人姉妹しかおらず、一族の財産を守るために遠縁の中産階級出身弁護士マシュー・クローリーが後継者として呼び寄せられることで、伝統と近代化の衝突が幕を開けます。
相関関係を把握する上で押さえるべき主要人物の配置は以下の通りです。
- クローリー家(階上):当主ロバート(グランサム伯爵)、アメリカ人富豪の妻コーラ、舌鋒鋭い先代伯爵未亡人バイオレット、プライド高く聡明な長女メアリー、不器用で屈折を抱える次女イーディス、平等を愛する自由奔放な三女シビル。
- 使用人(階下):伝統を重んじる厳格な執事カーソン、実直で情に厚い家政婦長ヒューズ、足に障がいを抱えながらロバートに忠誠を尽くす従者ベイツ、優しく芯の強い侍女アンナ、野心と葛藤を抱える副執事トーマス・バロー、料理長パットモアと助手のデイジー。
物語の核心となる長女メアリーは、マシューとの紆余曲折を経た結婚、そして彼の早すぎる死を乗り越え、自立した女性領主代行として領地経営に深く関わっていきます。最終的に彼女はカーレーサーのヘンリー・タルボットと再婚し、伝統的な貴族の枠組みにとどまらない新たな生き方を確立させます。
日本語吹き替え版のキャスト陣も極めて豪華であり、メアリー役の甲斐田裕子、バイオレット役の一柳みる、ロバート役の玉野井直樹、マシュー役の内田夕夜、トーマス役の三上哲など、英国演劇特有の格調高い台詞回しを見事に再現している点も、日本国内で高い評価を得ている大きな要因です。