高度経済成長期、燕の街は昼夜を問わず金槌の音と機械の重低音が響き渡っていた。職人たちは猛烈な勢いで汗を流し、身体は自然と塩分と高いカロリーを欲した。そこに現れたのが、塩分の利いた煮干し出汁ベースの醤油スープと背脂の甘みが絶妙に調和した一杯だ。
店先には連日、仕事着のまま駆けつける職人や出前を待つおかもちが溢れかえっていた。地域経済の躍動と食文化がこれほど強固に結びついた例は、全国的にも極めて珍しい。街の発展を陰で支え続けた胃袋の記憶は、地元住民にとって今も単なるノスタルジーではなく、誇り高きアイデンティティとして息づいている。