映画の結末で合格を勝ち取った熊本市役所でのキャリアは、彼女の自立の原点でした。公務員試験に合格したことは、単なる美談ではなく、彼女が培ってきた知性と実力の証明でした。
配属先の市民窓口や福祉関連部署などにおいて、白井さんは足指で万年筆を操り、見事な美文字で住民票などの書類を作成・処理していきました。当初は足で執務を行う姿に怪訝な表情を浮かべる来庁者もいたものの、淀みのない迅速かつ丁寧な仕事ぶりや、温かな応対を目の当たりにして、偏見は瞬く間に敬意へと変わっていったと語り継がれています。
長年にわたり公僕として市民のために汗を流した白井さんですが、2006年3月、勤続20年以上の節目を迎えて熊本市役所を退職しました。退職を決断した背景には、成長期にあった息子たちとの時間を大切にしたいという母としての思いに加え、自身のこれまでの歩みや「命の尊さ」を語り部として社会に還元したいという、次なる人生の使命感がありました。