まる子の日常を取り巻く人間関係は、一見シンプルに見えて極めて立体的な階層構造を持っている。家族から教室の片隅まで、さくら家と3年4組の最新相関図を紐解くと、当時の社会風俗や作者の鋭い人間観察が浮き彫りになる。
まずさくら家。お調子者でまる子を溺愛する祖父・友蔵だが、作中で詠まれる「友蔵 心の俳句」の哀愁とは裏腹に、原作者のエッセイではリアルな祖父との関係性が全く異なっていたことは有名な逸話だ。理想の優しいおじいちゃん像として再構築された友蔵は、まさに創作が生んだ救済のキャラクターといえる。酒と釣りを愛する父・ヒロシの無頓着さ、怒ると怖いが家族の健康を常に支える母・すみれ、西城秀樹の大ファンで現実主義の姉・さきこ。家族間の距離感は、ベタベタした愛情表現ではなく、遠慮のないドライさと無言の信頼で結ばれている。
そして物語のダイナミズムを生み出す3年4組の面々。大金持ちでキザながらクラスメイト思いの花輪クン、学級委員の座に異常な執念を燃やす丸尾君、暗い笑い声を響かせながら独自の観察眼を持つ野口さん。さらに、卑怯者のレッテルを貼られながらも人間臭い葛藤を見せる藤木や、玉ねぎ頭で強烈な皮肉屋の永沢など、およそ従来の児童向けアニメでは主役級になり得ない「欠点だらけの人間」が生き生きと配置されている。実在の同級生をモデルにした親友・たまちゃんやはまじのエピソードも含め、彼らの歪さと愛嬌のバランスこそが、群像劇としての強度を担保しているのだ。