玄理の名を世界基準のアートハウス映画界に決定づけたのが、濱口竜介監督による短編集『偶然と想像』の第1話「魔法(よりもっと不確か)」である。タクシーの車内で繰り広げられる親友との会話、そしてかつての恋人との再会。日常の延長線上にあるはずの空間が、彼女の巧みな台詞の抑揚と沈黙によって、息が詰まるほどのスリリングな心理劇へと変貌した。
第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した本作において、彼女の演技は海外プレスの間でも高く評価された。感情を大袈裟に爆発させるのではなく、言葉の隙間に潜む人間の身勝手さや痛みを冷徹かつ繊細に炙り出すスタイル。これこそが、世界各国のフィルムメーカーが彼女を熱望する最大の理由といえる。