近年、ネットコミュニティやSNS上では、生食に関する初歩的かつ重大な誤解が後を絶たない。大手知恵袋やX(旧Twitter)などの投稿を調査すると、「生鮭を買ってきたが、刺身で食べても平気か」「生鮭と書いてあるのだから生で食べられると思った」という危険な勘違いが散見される。
流通業界の用語において、切り身パックに記された「生鮭」の「生」は、「塩漬け(塩鮭)にしていない、生の魚肉」を意味するものであり、「生食(刺身)可能」という意味ではない。これを誤認して家庭で刺身にして食し、夜間に救急外来へ駆け込むアニサキス中毒事故は今なお後を絶たない。現場の水産バイヤーは「刺身用、生食用という明確なシールが貼られていない鮭のサクや切り身は、絶対に中心部まで加熱調理してほしい」と警鐘を鳴らす。
一方で、SNSでは「天然鮭こそ至高で、養殖サーモンは薬品まみれで危険」といった根拠の薄い言説も時に拡散される。しかし、現在の国際水準における養殖サーモンは、ワクチン接種の普及によって抗生物質の使用が極限まで削減され、水質や飼料の重金属検査も厳格に行われている。安全面においては、寄生虫のリスクを完全に排除できない天然魚よりも、トレーサビリティが確立された養殖サーモンの方が予測可能で安全性が担保されているというのが、水産食品衛生の共通認識である。