物語の終盤、山羽家が長年ひた隠しにしてきた数々の嘘と真相が次々と明らかになります。完璧に見えた長男・光司が抱えていた絶望、彼が家を出た本当の動機、そして妹の環がつき続けてきた嘘の裏にあった切実な願いが交錯します。
光司の死後、山羽家は「優秀な兄を失った可哀想な家族」という仮面を被り続けていました。しかし実態は、祖母と母の過剰な期待が光司を追い詰め、家庭を壊していたのです。環がついていた数々の嘘は、崩壊しかけた家族を繋ぎ止めるため、あるいは歪んだ現実から自分自身の尊厳を守るための防衛本能でした。
羽美は実家と対峙する中で、これ以上「都合のいい次男」として振る舞うことをやめる決意を固めます。家族だからといって無条件に分かり合えるわけではない。許せない過去を無理に許す必要もない。羽美は家族との適切な距離を見出し、頼子とともに「自分自身の人生」を歩み直す一歩を踏み出します。物語は、過去の傷を完全に消し去るのではなく、傷跡を抱えたまま生きていく静かな希望に満ちた結末を迎えます。