小筆の寿命を劇的に伸ばすための基本は、実にシンプルながら厳格だ。まず、ほぐす範囲は「筆先から3分の1、最大でも半分まで」にとどめる。根元側の糊は絶対に壊してはならない。
初心者が最も陥りやすい罠が、指先でねじり切るようにほぐす行為や、水道の蛇口から出る流水に筆先を直接晒すことだ。強い力や水圧は、繊細な毛のキューティクルを剥がし、毛切れや毛割れを引き起こす。大手製墨・筆メーカーである株式会社呉竹や株式会社墨運堂の技術指導でも、指の腹を使い、優しく撫でるように少しずつ揉みほぐす手法が推奨されている。
指先で軽くほぐした後は、指に水を含ませて先端の糊だけを少しずつ湿らせ、ティッシュペーパーや不要な紙の上で転がしながら余分な糊を落としていく。このわずか数分の丁寧な儀式が、数ヶ月、数年と続く筆の寿命を決定づける。