最終決戦の舞台となった巨大サイキック要塞「エンジェル・ハイロゥ」は、本作の異質さを象徴する舞台装置だ。2万人のサイキッカーの脳波を束ね、全人類の精神を幼児退行させて闘争心を奪うという狂気の兵器。この超常的な空間において、兵器同士の戦闘は通常のリアルロボット作品の枠を大きく逸脱した心理戦へと変貌した。
富野監督が仕掛けた裏設定の本質は、テクノロジーによる救済という欺瞞の解体にある。母性的な精神の包摂を標榜しながら、実態は強制的な自我の剥奪に過ぎない。この歪んだ祈りの空間の中で、自らの欲望に純粋すぎるカテジナと、誇りに固執して自滅していくクロノクルのコントラストが鮮明に浮かび上がった。
戦場全体が幻覚と狂気に包まれるなか、ウッソは幼年期の終わりを告げる過酷な現実と対峙せざるを得なかったのだ。