日本の家庭料理界を牽引し続けるトップシェフたちも、独自の哲学で弁当の盛り付けに向き合ってきた。伝説の家政婦として知られるタサン志麻氏は、フランス料理の合理性と素朴な温もりを融合させたアプローチを提唱する。「料理は完璧に整えすぎないこと。少しの余白と素材そのままの形を活かすことで、食べる人にリラックスした美味しさが伝わる」という視点は、忙しい現代人の肩の荷をすっと下ろしてくれる。
一方で、料理研究家の栗原はるみ氏が長年伝えてきたのは、細部への小さな心配りだ。千切りにした野菜の美しいライン、タレが他の具材に混ざらない工夫、そして開けた瞬間に季節を感じさせるあしらい。家庭料理の延長線上にありながら、どこか凛とした佇まいを感じさせる盛り付けの技法は、世代を超えて受け継がれている。
二人に共通しているのは、奇をてらった飾り立てではなく「食べる人の笑顔を想像した機能美」を追求している点だ。気負わずに作られたおかずであっても、丁寧な一手間を加えるだけで格別の輝きを放つ。