猫の排泄トラブルには、通常の排泄姿勢(しゃがんで水平面にする排尿)と、立ったまま垂直面に吹きかけるスプレー行動の2種類が存在する。動物行動学の観点からこの2つを明確に区別することが、対策の第一歩となる。
日本獣医動物行動研究会において数々の症例や研究発表を行っている獣医師の入交眞巳氏は、猫の不適切な排泄行動の背景には環境要因や不安、縄張りの脅威が複雑に絡み合っていると指摘する。例えば、窓の外に見える野良猫の影、引っ越しや模様替えによる室内環境の変化、同居猫との不和、さらには飼い主の生活リズムの変化すらも、猫にとっては重大なストレス源となり得る。
猫にとってスプレー行動は、周囲に自分の匂いを漂わせることで「ここは安全な自分のテリトリーである」と自己確認するための防衛機制に近い。したがって、スプレーされた現場で大声を出して叱る行為は、猫の不安を煽り、隠れて別の場所にスプレーする悪循環を生むだけだ。叱責を即座にやめ、環境エンリッチメントと科学的アプローチによる安心感の再構築へ舵を切らなければならない。