近年の邦画ラブストーリーにおいて、カルチャーシーンを巻き込んで決定的な転換点となったのが『花束みたいな恋をした』だ。終電を逃した深夜の明大前駅で偶然出会った男女の5年間。サブカルチャーの固有名詞を散りばめながら描かれる恋の始まりと、社会に出て生活を営む中で少しずつズレていく価値観の描写は、あまりに生々しく観る者の古傷をえぐる。
主演の有村架純が見せた、恋する喜びから静かな諦念へと移ろう眼差しのグラデーションは圧巻のひと言に尽きる。劇的な事件が起きるわけではない。ただ時間が流れ、人が変わっていくだけ。その残酷さと尊さを同時に提示した本作は、現代を生きる大人たちにとっての新たなマスターピースとして語り継がれている。