コナズ 珈琲 津の重厚なウッドドアを押し開けた瞬間、国道23号線沿いの喧騒はあっけなくかき消される。鼻腔をくすぐるのは、甘く香ばしいココナッツと焙煎したての上質な豆の香り。三重県津市にいながら、太平洋を渡ったオアフ島のローカルダイナーに迷い込んだかのような錯覚。外食産業が効率化と省人化へ突き進むなか、あえて「非日常の手触り」と「圧倒的な居心地」を突き詰めたコナズ珈琲の空間作りには、一度足を踏み入れると忘れられない引力がある。
週末はもちろん、平日の昼下がりであっても広いパーキングが埋まる光景を見るにつけ、いまやコナズ 珈琲 津は単なる飲食店という枠組みを超え、地元の人々が日常の疲れを脱ぎ捨てるシェルターとして定着していることがよくわかる。潮風を感じさせるヴィンテージウッドの家具、天井でゆっくり回るファン、不揃いなソファ。そのすべてに、計算し尽くされた体験価値が宿っている。
日常を一瞬でオアフに変える空間設計とトリドールの執念
讃岐うどん専門店「丸亀製麺」で世界を席巻した株式会社トリドールホールディングス。その創業者であり代表取締役社長兼CEOの粟田貴也氏が率いる同社が、まったく異なるアプローチで育て上げたのがこのハワイアンカフェブランドだ。効率や回転率を重視する一般的なファストカジュアルとは対照的に、滞在時間そのものを楽しんでもらう「体験消費」へ舵を切っている。
津藤方店に足を踏み入れると、その思想が細部にまで行き届いていることに驚かされる。画一的なチェーン店の匂いは微塵もない。無垢材のテーブル、観葉植物の緑、壁面に飾られた色褪せたサーフボード。スタッフの自然体な笑顔とアロハシャツの色彩までもが、訪れる者の肩の力をすっと抜いていく。三重県津市のロードサイドという立地でありながら、扉の内側には完璧なリゾートの時間が流れている。
【現地取材】看板ハワイアンパンケーキと粗挽きロコモコの実力
テーブルに運ばれてきた瞬間、思わず声が漏れる。皿の中央にそびえ立つのは、高さ15センチを超えそうな圧倒的ボリュームのホイップクリーム。ハワイアンパンケーキの真骨頂だ。しかし、見た目の重厚さに怯える必要はない。口に含むと驚くほど軽やかで、シュワリと溶けて消える。卓上に置かれたミルを使い、コナコーヒーの粉末をパラパラと振りかけるのがコナズ流の作法。ほろ苦いアロマが加わることで、甘みが引き締まり、最後の一口までフォークが止まらない。
食事系メニューの筆頭であるロコモコも妥協がない。粗挽きのビーフパティは噛み締めるたびに肉汁が溢れ出し、深みのある特製グレービーソースと半熟卵の黄身が絡み合う。ハワイ現地の味を忠実に再現しつつ、日本人の舌に馴染むコクを追求した仕上がりだ。希少なコナコーヒーをハンドドリップで丁寧に抽出した一杯とともに味わえば、胃袋も心も完全に南国へとトリップする。