志々雄真実を演じるにあたり、最大の障壁となったのが全身を覆う特注の包帯スーツでした。全身火傷を負った志々雄の皮膚と包帯をリアルに再現するため、スーツは通気性が一切ない特殊素材で作られており、一度着用すると汗の逃げ場がなく、体感温度は異常な高さに達したといいます。
装着には毎日数時間を要し、一度着てしまえば自力で脱ぐことはおろか、トイレや食事すらままならない過酷な環境でした。耳まで覆われているため周囲の指示や共演者の声が聞き取りにくく、口元も固定されているため呼吸すら制限される密閉状態。藤原竜也本人は後のインタビューで「耳は聞こえない、ご飯は食べられない、暑くて息も苦しい。撮影中は早くこのスーツを脱ぎ捨てたくてたまらなかった」と過酷な舞台裏を明かしています。
しかし、その逃げ場のない極限のフラストレーションこそが、明治政府への怨嗟と世への憤怒をたぎらせる志々雄真実の狂気と奇跡的にシンクロ。肉体的な苦痛を演技の熱量へと昇華させた藤原竜也のプロ根性が、あの狂気に満ちた演技を生み出した大きな要因となりました。