『キングダム』における廉頗のドラマチックな描写は、中国の史書『史記』に記録された実在の将軍・廉頗の波乱に満ちた生涯を見事に再構成したものだ。史実における廉頗は、名宰相・藺相如(りんしょうじょ)との「刎頚の交わり(ふんけいのまじわり)」で知られる趙国の英雄である。
しかし、趙の悼襄王(とうじょうおう)との対立により国を追われ、魏国へ亡命した。山陽の戦いは、漫画において魏国の客将として参戦した廉頗の勇姿を描いているが、史実でも廉頗は魏や楚を転々としつつも、故郷である趙への想いを抱き続けたとされる。
晩年は楚の寿春にて没したと伝えられており、才能を持ちながらも時代の巡り合わせと政治的暗闘に翻弄された過酷な宿命がうかがえる。作中で描かれる圧倒的な武勇とどこか漂う哀愁のバランスは、史実の持つリアリティと原泰久氏のドラマチックな脚色が融合した傑作の証と言える。