なぜイカとタレが焼ける匂いは、これほどまでに食欲を刺激するのか。その謎は食品・調味料製造産業における香気分析の研究によって科学的にも実証されている。キッコーマン株式会社をはじめとする醸造メーカーの研究では、アミノ酸と糖が加熱によって結びつく「メイラード反応」が、人間が本能的に好む数十種類もの芳香成分を一挙に生み出すことが解明されている。
特にイカが持つ豊富なタウリンやグリシンが、濃口醤油特有の有機酸やアルコール分と熱せられることで、単なる塩味や甘味を超えた「香ばしさの爆発」が起きる。プロが「タレはフライパンの縁で少し焦がすように回し入れろ」と口を揃えるのは、科学的にも完全に理にかなった加熱調理の真理なのだ。