1997年の公開当時、興行収入の新記録を打ち立てた本作は、日本のアニメーション産業のパラダイムを根本から覆した。それまで子供向けや一部のマニア向けと見なされがちだった劇場アニメの枠組みを、国家的な社会現象へと押し上げた立役者が『もののけ姫』だった。
本作が提示した「人間と自然の対立」は、安易な和解や環境保護の美談では終わらない。タタラ場の人々は生きるために鉄を打ち、木を伐採する。エボシ御前は差別されていた人々を救う慈悲深い指導者でありながら、神々にとっては無慈悲な侵略者である。この複雑に入り組んだ構造の真ん中で暴れ狂うタタリ神は、文明の発展が支払わなければならない避けられない代償の象徴として描かれている。