犬が体を横に倒し、前後の四肢を自然に投げ出して眠る「横向き」は、家庭犬においてもっとも健全かつ理想的な寝姿です。この体勢では筋肉の緊張が完全に解かれ、骨格や関節にかかる負担が分散されます。犬の寝方が横向きの時に、手足が小刻みに動いたり、小さく「クゥーン」と鳴いたりする様子が見られるのは、脳が活発に記憶を整理しているレム睡眠に入っている証拠です。この状態にある愛犬は心身ともに最高度の安心感を享受しており、無理に起こさずそっとしておく必要があります。
一方、前足を揃えて胸を地面につける「スフィンクス型」や、後ろ足をまっすぐ後方に伸ばす「スーパーマン型」などのうつ伏せ姿勢は、睡眠の深度としては極めて浅い段階を示します。スフィンクス型は、物音や飼い主の動きに対して即座に跳び起きることができる「待機モード」の仮眠です。警戒心が強く神経質な性格の個体や、番犬気質の強い犬種に多く見られます。
ただし、うつ伏せで床にペタリと腹部を密着させている場合、心理的な緊張ではなく「物理的な冷却」を目的にしているケースが珍しくありません。特に夏季や暖房が効きすぎた部屋では、毛の薄い腹部を冷たいフローリングや大理石マットに密着させ、伝導熱によって深部体温を下げようとします。犬の寝相とリラックス度を正しく見極めるには、ポーズの形状だけでなく、全身の筋緊張の有無と周囲の温湿度環境を複合的に観察することが欠かせません。