本作の終盤、長期間の育児放棄(ネグレクト)の末にアパートへ帰宅した母親・由希子(伊澤恵美子)は、ゴミと排泄物にまみれた部屋で動かなくなった長女・幸(さち)と長男・蒼空(そら)を発見します。映画はその直後、観客の予想を大きく裏切る異様なシークエンスへと移行します。
由希子は取り乱して警察や救急車を呼ぶのではなく、無言で部屋を激しく掃除し始めます。散乱したゴミを片付け、汚れを拭き取り、冷たくなった子供たちの体を綺麗に洗って清潔な服を着せます。そして、カーテンを開け放ち、窓から部屋全体へ過剰なまでの白い自然光を招き入れます。
食卓には食事(ホットケーキ)が並べられ、あたかも平穏な日常の朝が訪れたかのように、由希子は子供たちに向かって微笑みかけます。固定カメラが捉えるその構図は、一見すると宗教画のような神聖さすら帯びていますが、映っている現実は「二人の子供の遺体」と「完全に精神が崩壊した母親」という、救いようのない絶望の極致です。