なぜ日本の大学はこれほどまでに卒業要件を多様化させているのだろうか。大学教育学の専門家や有識者たちの間でも議論が白熱している。社会学者の吉見俊哉氏は、大学の知的な役割が重厚な学術論文の作成だけにとどまらず、社会と接続されたオープンな知の循環へと移行している背景を指摘する。長年キャンパスの解体と再構築を論じてきた視点から見ても、卒論の一極集中からの脱却は自然な流れと言える。
一方で、教育学者の佐藤学氏らが提起してきたような、対話的で協働的な学びの重要性も関係している。従来の孤立した論文執筆よりも、協働的な探究活動やプロジェクト学習の成果を評価する方が、実社会で求められる能力を正しく測定できるという考え方だ。従来の「学士号取得要件」における卒論の位置づけは、学術研究の登竜門から、多様なコンピテンシーを証明するひとつの選択肢へと明確に変化している。