映画で描かれるハウルは神秘的な魔法使いだが、イギリスの作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズによる原作小説『魔法使いハウルと火の悪魔』を読むと、彼の人間的ルーツがさらに明白になる。
原作におけるハウルは、実は現代のウェールズ出身の若者「ハウエル・ジェンキンス」という設定だ。大学で英文学を修め、ラグビーに興じていた普通の青年が、魔法の扉を通って異世界へと逃避してきたというバックグラウンドを持つ。現実の面倒事から逃げ出し、身なりばかりを気にするナルシストという設定は、映画版の根底にも色濃く受け継がれている。
この裏設定を知ると、彼の見栄っぱりな言動や臆病な振る舞いがすべて合点にいく。彼は決して無敵の英雄ではない。私たちと同じように悩み、逃げ出し、それでも大切なもののために勇気を振り絞る「等身大の若者」だからこそ、その姿は愛おしく、そして格好良いのだ。