彼女のキャリアを語る上で避けて通れないのが、『TOKYO TRIBE』への出演経緯です。当時のインタビューや映画専門誌の記録によると、彼女は元々アクションメンバーの1人としてオーディションに参加していました。しかし、その卓越した身体能力と凄まじい気迫に目を留めた園子温監督が、急遽予定を変更してヒロイン役に大抜擢したという経緯があります。
当時の特番インタビューにおいて、清野菜名は「ここで全てを出し切らなければ、この先女優として生き残る道はないと思った」と当時の切迫した心境を赤裸々に吐露しています。ティーン向けファッション誌『ピチレモン』の専属モデルとしてキャリアをスタートさせたものの、その後は仕事に恵まれず、アルバイトで食いつなぎながらアクション養成所でアクロバットや擬斗の訓練に明け暮れる日々を過ごしていました。
『TOKYO TRIBE』の劇中では、ハイキックを繰り出すたびに衣装がはためき、男性キャラクターに馬乗りになられて身体をまさぐられるような緊迫したサスペンス演出が存在します。しかし、映像を精査しても胸部や局部が露出しているカットは1フレームも存在しません。観客に「そこまでやるのか」と息を呑ませたのは、露出の度合いそのものではなく、CGやスタントダブルに頼らない「吹き替えなしの身体性」と、表現のために全てを投げ打った鬼気迫る覚悟でした。