水野久美のキャリアを語る上で欠かせないのが、1960年代に東宝特撮映画で見せた圧倒的なヒロイン像です。劇団俳優座の養成所を経て東宝に入社した彼女は、正統派の清純派からミステリアスな悪女まで演じ分ける稀有な美貌と確かな演技力で、瞬く間にトップスターの座へと駆け上がりました。
1963年のカルト的傑作『マタンゴ』では、遭難したヨットの中で人間の業とエゴを体現する歌手・関口麻美役を熱演。極限状態の中で見せる冷徹かつ魅惑的な表情は、映画ファンの脳裏に強烈なインパクトを焼き付けました。
さらに彼女の名を世界に知らしめたのが、1965年の『怪獣大戦争』におけるX星人・波川女史役です。感情を排した冷酷な異星人でありながら、地球人の男性(ニック・アダムス演じるグレン)と恋に落ち、最後には人間らしい心を取り戻して散っていく悲劇のヒロインを完璧に演じ切りました。タイトなコスチュームに身を包んだそのクールビューティーな姿は、今なお特撮史上最高峰の美しさと評されています。
翌1966年の『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』では一転、インファント島の情熱的な女性・ダヨ役を演じるなど、作品ごとに全く異なる表情を見せて映画ファンを魅了し続けました。