ネット上のグルメコミュニティや昆虫食イベントで囁かれる「カミキリムシの幼虫はマグロの大トロ以上」という評判は、決して大げさな誇張ではありません。口に含んだ瞬間に広がる濃厚な甘みととろけるような舌触りは、多くの美食家を唸らせてきました。
一般的な地中性昆虫(カブトムシやセミの幼虫など)は土壌や腐植土を食べるため、特有の泥臭さやえぐみが消化器官に残りやすい特徴があります。それに対してテッポウムシを食べる理由として最大の根拠となるのが、その清浄な食性にあります。幼虫は健全な樹木の形成層や木部、樹液の流れる道管のみを食い進んで成長します。いわば「純粋な樹木エキス」だけを凝縮して育つため、内臓に嫌な苦味や臭みが一切生じません。
特に食味の頂点とされるのが、クヌギやクリの生木に潜むシロスジカミキリの昆虫食としての価値です。体長7〜10cm近くまで肥大化した幼虫は、重量の30%以上が良質な不飽和脂肪酸とオレイン酸主体の脂質で構成されています。炭火で炙ると外皮がソーセージの薄皮のように張り詰め、噛んだ瞬間に中から温かいピーナッツバターや生クリームのようなコクが溢れ出します。この甘みと脂の融点が人間の体温に近いため、昆虫食におけるトロの味と評判が定着したのです。
一方、ミカンやイチジク、ヤナギの木に寄生するゴマダラカミキリの幼虫の味は、シロスジカミキリよりも小ぶりながら、どこか柑橘類の爽やかな薫香を微かにまとった上品な甘みが際立ちます。寄生する樹木の樹種によってカミキリムシ幼虫の味に明確なテロワール(土地や環境による風味の違い)が宿る点も、知食派を虜にする大きな要因です。