高山市上三之町の一角に店を構える「いわき」。週末はもちろん、平日であっても開店時間の午前9時前から店頭には静かな熱気を帯びた列が形成されます。観光シーズンともなれば、開店からわずか1〜2時間、11時台には「本日は完売いたしました」の札が掲げられることも珍しくありません。
これほどまでに人々を惹きつける最大の理由は、一切の妥協を排した伝統的な製法にあります。同店が手掛けるのは、厳選された本わらび粉を職人が直火の銅鍋で丹念に練り上げた本格派の和菓子です。大量生産の機械練りでは決して再現できない極上の弾力と、口に含んだ瞬間にすっとほどける滑らかさは、一度味わうと記憶から離れません。
一釜ごとに職人が全神経を注いで手作業で練り上げるため、1日に製造できる数量には物理的な限界があります。「売り切れが早い」という現象は単なる過熱人気だけでなく、品質を最優先に守り抜く職人の誇りとこだわりが生み出した必然の結果といえます。